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ステンシル作成

(2018.11.12 作成) 

 最近は中国の基板メーカーさんに頼むととても安く基板を作成してくれます。そしてステンシルとは作成した基板にクリームはんだを塗るための型のことです。メーカーさんによってはメタルマスクなどと呼んでいますが、いずれにせよ金属の薄板にエッチングなどで穴をあけたものになります。

 これもメーカーさんに同時に頼むと1000円以下で作ってくれますが、1枚ぐらいしか組み立てを行わないのであればちょっともったいないです。

 そこでこのページではステンシルを作成する方法を紹介しようと思います。ちなみに穴あけ加工はこちらで紹介しているレーザーカッターを使用しています。

基板設計

 KiCADを使って適当に基板を設計します。今回はこの基板用のステンシルを題材に作成してみようと思います。ちなみにこの基板は中華製DCDCコンバーターMT3608の評価基板です。わざわざ基板おこすほどもないんですが。。。

データ作成

 まずKiCADでマスクデータ(F.Mask, B.Mask)を保存します。この際、あとでデータをInkscapeで加工できるようにSVGファイルとして保存します。Mask以外のレイヤーは特に必要ありませんのでチェックを外すか出力ファイルを削除するかしてください。

 Inkscapeで先ほど保存したファイルを開きます。そうすると図のように黒塗りされた状態で、読み込まれます。これだと少しわかりにくいのでオブジェクト→フィル/ストロークと選んでフィルを消し、ストロークを0.1mm幅ぐらいに設定すると外周だけの図になります。

 紙面左下が加工原点になるのでわかりやすいようにパターン全体を左下に移動します。

 その後パターンを選択して右クリック→グループ解除してすべてのグループ化を解除してください。

 そしてさらに際不要な線を消去します。例えば今回の場合コネクタは手はんだで取り付けるのでこういった線を消しておきます。

 開けたい穴だけになったら次に線を太らせてやります。この後太った線の内側を実際の開口とするのですが、パターンぎりぎりにマスクを作るとはんだを塗った際に量が多すぎるので多少小さめを狙います。今回の場合線幅を0.6mmとしました。

 次に"パス"→"ストロークをパスに変換"を選んでパスに変換したのち"パス"→"分解"を選びます。

 こうすることで線の内側と外側が別のラインとなり、それぞれが塗りつぶされます。この際期待通り分解できないパターンがあればそれはグループ解除ができていないことが原因なので一旦元に戻ってグループ解除をし直します。

 再び塗りつぶしを線画にすると左図のように太らせたラインの内側と外側がそれぞれ別の線として分離されています。外側の線は不要なのですべて消します。

 こうやって一回り小さなパターンが作成できました。

 ここからさらに必要に応じて修正を行います。例えばチップ下に放熱パッドがある部品などでは放熱パッドのはんだ量を減らすなどを行います。

 具体的にはサイズを変えたい線を選んでパス→インセットを選んでやると多少パターンが小さくなります。この際の変化量はInkscapeの設定で選べるのですが、イマイチこの設定値の値がどう機能しているのかよくわからないので、適当に値を設定します。

 最後にできたパターンを再度SVGファイルとして保存するのですが、その際ドキュメントのプロパティで単位をmmにします。これをやっておかないとPixel単位なのでとんでもない位置にレーザーを照射することになります。

加工

 ここまでくれば後は加工ソフトで読み込んで加工すればOKです。管理人の場合はLaserGRBLを使用しているのですが、左図のように問題なく読み込めています。

 

 今回ステンシルは100均のセリアで購入したメッセージカードで作りました。程よい厚みがありつつ、しっかりした素材なので一度使ってもアルコールで拭くときれいになるので、数回は使えそうです。

 ここまでくると後は加工して、クリームはんだ塗って、ヒートガンでリフローして、最後にちょっと手で修正しつつ基板の完成です。

 いかがでしょうか?慣れてしまえば1時間かからずに作ることができると思うので、ステンシルを買うよりはいいかもしれません。多少失敗してもすぐ作り直せますしね。