(2017.9.3 作成)
(2018.1.3 更新)
このページでは南京择明电子有限公司の電圧トランスZMPT101Bを用いた交流用の電圧センサについて紹介しようと思います。
トランス自体は写真の青色の箱でなので、実際に使用するには周辺回路が実装されたShenzen LC Technologyのモジュールを使用するのが入手性、価格とも便利です。
Aliexpressで検索すると記事執筆時点で1個160円ぐらいで購入できます。"single phase voltage sensor"で検索するとよいと思います。
このモジュールを使うのは非常に簡単です。写真の左側に測りたい交流を入れ、右側のOutputから計測するだけです。出力はアナログ値ですので別途マイコン基板のADコンバータ等でディジタルデータに変換します。
出力ですが下図の通りVcc/2を中心に交流波形がそのまま出力されます。振幅は基板上のポテンションメータで調整できるのですが、振幅を最大にしても出力がVccを超えることはないので、安心してマイコンに接続することができます。
また調べた回路を後に示しますが、バンドパスフィルタがついていますので商用周波数を計測するには最適なモジュールになっていると思います。
使用範囲は以下の通りだと思いますが、メーカーの仕様ではなく管理人の解析結果なのであくまで参考程度に留めてください。
Input : ~1000V
Vcc: 3~32V
Frequency: 約20~100Hz
ただし、実際に使用すると位相ずれや出力のクリップなどが発生するため、オシロスコープで確認しつつ使うことをお勧めします。詳細は以下の説明文を読んでみてください。
本モジュールはほとんどネット上に情報がないので、自分なりに頑張って理解してみました。もとになった回路図はこのページを参考にしました。なお管理人は電気エンジニアではないので間違いがあるかもしれません。
そこでどう動いているか理解するためにLTspiceのモデルを作成しました。
<Download>
この回路図に従って3つのブロックについて分けてみてみます。
入力段に820kΩの抵抗が接続されていますので、ピーク141Vの商用電源が入力されるとL1コイルには±170uAの電流が流れます。
L2側には1:1のトランスなので同じ電流が流れ、R11の両端ではV=IRで±17mVの電圧が生じます。
次に初段オペアンプ周辺ですが、まず先ほどのR11の出力をオペアンプに差動増幅として入れています。このため同相ノイズを除去できます。
またC2/R2で16HzカットオフのHPF、C1/R1で160HzのLPFを構成し、両方で16~160Hz透過域のバンドパスフィルタを構成しています。
さらに同時にR1とR2で10倍の増幅が行われており、17mVの電圧は170mVになります。
またオペアンプの+入力にはVcc/2が加わっていますので、出力はVcc/2が中心になるようオフセットが加わります。
要するにまとめると出力は Vcc/2±170mVになります。
さらに反転増幅になっているので出力は正負が逆になります。
2段目にも初段と同じ10倍増幅のバンドパスフィルターが取り付けられています。再度反転増幅になるので、出力の正負は元に戻ります。
電圧に関しては170mVをさらに±1.7Vまで増幅します。ただし1.7Vまで増幅すると正常に出力されなくなる場合があるため、ポテンショメータで事前に電圧幅を下げておく必要があります。
ところが例えばVcc=3.3Vで増幅率を最大にすると左図のように出力がサチります。
この原因ですが使用されているオペアンプLM358では正常に動作する範囲はVcc-1.5Vまでです。
このため出力はVcc/2 + 1.7 =3. 35Vまで出力したいのに対し、LM358では3.3-1.5=1.8Vまでしか出せないため、クリップが発生しています。
このクリップが発生しないために初段増幅後の振幅が右グラフの範囲に収まるようにポテンショメータで電圧を下げる必要があります。
特にVccが3.3Vだとほとんど振幅をとることができなくなっています。
Vcc=6.4Vまでは前段で振幅を下げておく必要があることが分かります。
出力の最大値がVcc-1.5Vでクリップしてしまうので、変調幅を最大にするため位には電位の中点をVcc/2から(Vcc-1.5)/2に下げるのがよさそうです。
これを具体的に実施するためには最終段のR4/R7を変更してオフセットを下げるのがよさそうです。
しかも実際の変更に関しては加工の観点から基板端のR7を乗せ換えるのが簡単だと思います。
最適と思われるR7を計算すると右の表のようになります。
Vcc=3.3Vの時 R7 = 3.3 kΩ
Vcc=5Vの時 R7 = 4.7 kΩ
がよさそうです。
あとはクリップが生じないようにポテンショメータで調整することで最大の変調度を得ることができると思います。
左図はこのような対策を行った時の出力です。Vcc=3.3Vですが、クリップが発生せず、0.5V近い振幅が得られています。
右の図は出力の周波数特性と位相のシミュレーションを行ったものです。
実線が周波数特性です。バンドパスフィルタによって20~100Hzのみ出力されることが分かります。
また破線は位相です。約55Hzで位相が360度になっており、ほぼ位相ずれはありません。しかし厳密に見ると50Hzや60Hzの商用周波数を見ると多少位相ずれが発生します。
左のグラフは実際に商用周波数を計測した結果です。黄色が入力で赤が出力です。
およそ1msのずれが生じています。周期が50Hz=20msなので5%のずれということになります。
波形がきれいなSin波でない場合はバンドパスフィルタによる変形も起こるはずです。
長々と記事を書いてみましたが、使い方によっていろいろと癖がありそうなモジュールです。できる方はLTspiceを使って実際に自分の環境でどうなるかご確認されることをお勧めします。(LTspice model Download)